なくもんか

<あらすじ>東京・下町。ハムカツで人気の「デリカの山ちゃん」の2代目店主・祐太は、誰の頼みも断らない究極のお人よし。彼は親に捨てられ、弟と生き別れた過去がある。そしてその弟こそ、人気お笑い芸人「金城ブラザーズ」の祐介だった。祐太は先代の娘・徹子と結婚、婚姻届を出すために手に入れた戸籍謄本で祐太が実の弟だと知る。早速祐介に会いに行く祐太。しかし偽の兄弟芸人として売り出していた祐介の態度はすげないものだった…。


<ネタバレ感想>観終わった後に、ほろ苦い映画だな!と思った。最初はコメディ映画だと思ってみていたのに、人の弱さとか、心の闇とかを辛らつに暴き出している毒のある映画だと感じた。特に胸を突いたのは、実の父親と一緒にすき焼きを囲むシーン。負の感情を抑圧していた主人公のコントロールできない感情が垣間見えて少し怖かった。つい感情移入してみてしまう。あと、後半くらいにある主人公のセリフに「嫌いな人にも好かれたいし、スキだって言ってくれる人にはもっと好かれたい!」みたいなのがあって、これは誰しもが思うことだけど、行動するのはすごく難しいことなんじゃないかな、と。なのに、主人公はそれを実践していて、その反動で誰にもいえない秘密を持っている。ここらへんのシーンはすごく笑えます。メリーゴーランド乗りたくなる。それにしても、人に優しくされたことのない弟と、人に優しくしすぎる兄、一体どちらが辛いんだろう。あと、兄弟芸人のお互いの依存度や、評価のズレっぷりが好きな人にはたまらん!と思うのかもしれないな。むしろこの二人だけでご飯が進みそうです。すれ違いウマーって、性癖としては最低だよね。だがそこがいい。最後まで見ていると、なんだか弟や奥さん、商店街の人たちは、主人公に期待しすぎているようにも思えて、それを「好きでやってるんだよ!」のオチとしてまとめてしまうのは私としては腑に落ちない。けど、それは私の感覚で物事を考えているからであって、映画の中ではこれ以上の理由が見当たらないような気もする。「幸せ」というものは、人の数だけ多様なカタチに変化するものであって、性格も環境も、それを生み出す要素にすぎないんだろうなぁとぼんやり思った。